スピリット・オヴ・サマー

「ホット、か?この暑いのに?」
「あら、香りのいいお茶はホットに限るわ。まあ、紅茶は香りで飲むものだしね。」
 憲治は千佳子の言葉に訛りがないことに気づいた。憲治が聞く。
「今、どこにいるの?」
「東京。1年、予備校に通ったけど、今は国立の大学。今年で卒業よ…。」
 語尾に覇気がない。千佳子の瞳に、一瞬影が挿した。憲治がいぶかるのを察してか、急に顔を上げ微笑みながら、
「あ、そうそう、表に止まってたバイク、憲治君の?」