スピリット・オヴ・サマー

 中学時代の「千佳子」の姿とは違う、時間の流れの中に生きている千佳子の姿。しかし、目許や、頬のふっくらとした辺りに、確かに「千佳子」を感じた。
「あ、見つけたー。」
 千佳子は微笑みながら憲治のいるテーブルに歩み寄る。
「よう、元気そうだな。」
 憲治も微笑みかけた。本当はそんな気分ではなかった。つい、さっきまでは。すぐにでも、「なぜ、俺を呼んだ」と問い正したかった。だが、千佳子の顔を見るとそうは行かなかった。
「8年振り、かナ?」
 そう言いながら憲治の向かいに腰掛ける千佳子。