「うん。」
 憲治の小さな返事に千佳子は、「ありがとう」と言って電話を切った。
 ちん、と小さく鳴って、電話は沈黙した。憲治はしばらく動きを止めた。
「何としたァ?」
 母が呼ぶ。
「俺、ちょいと出かけるから。」

第2節に続く