それ以前に、何故誰も騒がないのか、憲治はそのことが心に引っかかっていた。
 こんな田舎のことだから、20半ばの若いのと中学生が白昼のプールサイドでキスまがいの光景を見せれば、いくらなんでも何か言われるだろう。そう覚悟していたのだが、「何か」どころか冷やかしの一つすらなかった。水遊びに夢中で、誰も気がつかなかったのだろうか。
 そうも思ったが、プールサイドの、しかも憲治のすぐそばで背中を焼く少年たち。水際で水を蹴りながらおしゃべりに興じる少女たち。誰も気がつかないわけが無い。