『久しぶりに懐かしい人とお話しがしたいなぁって。』
 千佳子の妙なすがしさが気になった。
「で、何で俺な訳?」
 かなり意地の悪い言い方だと、憲治は自分でも思った。これは切られてもしょうがない。と言うより、切られたがっていた。嫌な感触が、舌の表面で心に麻酔を利かせている。
『…、』
 案の定、千佳子は押し黙った。しかし、少しの沈黙の後思い切ったように、
『…「PAVANE(パヴァーヌ)」で待ってて。お願い』。
 その声にははしゃいだ様子もなく、それどころか、つらそうな淀みがあった。