「おーい、青年。」
母の「小技の利いた」呼び声に憲治は食卓へ向かう。
「午前中な、電話来たど。」
冷や麦をすする憲治に母が言った。
「…誰から?」
「女の人。」
「それじゃ分からねぇな。」
憲治は冷や麦に散らした海苔が前歯にへばり着いたのを気にしながら、再び問い返した。
「名前、聞いてないのかよ?」
母は冷や麦を、ぐっと飲み込んでから、
「憲治は北中のプール監視のバイトで出てます、って言ったら、また掛け直します、って切れた」。
母の「小技の利いた」呼び声に憲治は食卓へ向かう。
「午前中な、電話来たど。」
冷や麦をすする憲治に母が言った。
「…誰から?」
「女の人。」
「それじゃ分からねぇな。」
憲治は冷や麦に散らした海苔が前歯にへばり着いたのを気にしながら、再び問い返した。
「名前、聞いてないのかよ?」
母は冷や麦を、ぐっと飲み込んでから、
「憲治は北中のプール監視のバイトで出てます、って言ったら、また掛け直します、って切れた」。



