淋しいのは空の蒼さだけではなかった。「憧子」がいないのだ。
「また、明日って、言ったのにな…。」
 一昨日、昨日、今日と、憲治のもとに「憧子」は現れなかった。プールを閉めた後、校舎の中に入ろうとはしたが、そうなると気が引けた。「憧子」が現れない理由が分かっていたからだった。
 「憧子」は恐れているのだ。会う度に憲治の死期を急速に早めてしまう事を。
「生きて。」
 そうつぶやく「憧子」の寂しげな微笑みが憲治の目蓋に焼き付いている。