沈黙の延長の果てに、「二人」が小さくうなづいて別れる頃、月は西に傾いていた。
 後2時間もすれば日が変わる。なのに、なかなか「さよなら」が言えなかった。憲治も「憧子」も。
 「憧子」がさよならのかわりに言った
「それじゃあ。」
と、憲治が言った
「また、あした。」
が、やっと「二人」の距離を開けた。だが、憲治が言った言葉に「憧子」は応えなかった。ただ、悲しげに見つめるだけだった。憲治も、黙したまま別れた。