片腕に上半身を預け、腰をきゅっ、とひねったそのポーズは、あの「人魚のブロンズ像」のそれであった。
どうにかなってしまいそうだった。抱き寄せたい。キスをしたい。そして「憧子」の言葉通りに、その体を男としての陰(シャドウ)で覆い隠してしまいたい。
しかし、激しく強い衝動と裏腹に、肉体がその実行を拒む。
月光の中、ゆらりと立ち上がる「憧子」の横で、憲治は思う。また、逃げてしまった。憲治は己の不甲斐なさを責めた。今夜が最後かも知れないのに。
どうにかなってしまいそうだった。抱き寄せたい。キスをしたい。そして「憧子」の言葉通りに、その体を男としての陰(シャドウ)で覆い隠してしまいたい。
しかし、激しく強い衝動と裏腹に、肉体がその実行を拒む。
月光の中、ゆらりと立ち上がる「憧子」の横で、憲治は思う。また、逃げてしまった。憲治は己の不甲斐なさを責めた。今夜が最後かも知れないのに。



