自分の今いるこの光景は、現実にはありえないだろう、逃避の成れの果てかも知れない。だがそれもいい。この後を生きるために必要とあらば、どこまでも逃げていこう。いつ迄も忘れよう。「憧子」を追いかけながら、いつか醒めるだろう、束の間の夢ならば、醒めるまでは夢を見続けていこう、と。
 憲治は今、全てを受け入れた。
 悔恨と、罪悪と、逃避。
 統べて、否定されながらそこにあるもの。消し去るのではない、認めることによる赦しを。そうとしか存在していなかった自分を。