「あ、ああ、あー。名前な、うん。」
 そしてひと息ついて、昼間、辞典と格闘した末に思いついた名前を告げた。
「と、う、こ。憧子。」
「トウコ?」
「憧れの子、と書いてトウコ、と読む。イイ名前だろ?」
 引きなれない漢和辞典に四苦八苦しただけあって、憲治は「どうだ」と言わんばかりであった。その憲治の様子に「少女」はまた少し笑って、
「んだなぁ、大学中退のプータロにしては良く考えだなァ。したらぁ、今からおらぁ『憧子』。『憧子』って呼ばってけれ、『憲治さん』?」。