憲治の驚愕に気づいた「少女」が視線を送る。その緩やかな様が哀愁を帯びる。やはり口元は見せない。その「少女」の仕種に憲治の凶々しい確信は揺るぎないものとなった。
 やはり、俺は死にかけている。そういうことなのだ。
 憲治はその様子に、ただうなずくほか、何もできなかった。言葉ははるか意識の奥底に沈み、引き上げることすらままならなかった。
 ぺたぺたとプールサイドのコンクリートを鳴らしながら「少女」は更衣室に消える。
 それを見届けた憲治の口から、やっとその台詞が出た。少しばかり思い切りが必要だったが。