憲治は夏のウソ臭い青空の果てに、疑問の言葉を吐いた。
「…夢か、な…?」
「一晩寝だら、体力回復したらしくて余裕が出だなぁ、憲治さん。おらの存在まで否定する気だがァ?」
 その声の方に顔を向けると、あの「少女」が腕組みをして立っていた。
「まぁだ自分の心さウソつぐ気だがァ?」
 濡れた黒髪、紺色の水着の微妙な影は、初めて会ったあの時と同じだ。だが人差し指を、ぴっぴっ、と小さく振りながら、悪戯にウィンクして微笑む仕草は、ずっと「現実味」を帯びている。生身の体温を感じるのだ。