それに、妙に都合が良かった様にも思う。
 憲治はキャップを机の上に投げ出して、ふと空を見上げた。
 確かに、「告白」は辛かった。「聖菜」の件に関しては、文字通り「身を裂かれるかの如き」であったのは間違いない。だからといって自分によくないことでもない。むしろ、そうあるべきと思って長年過ごしてきたことを実行したに過ぎない。
 ただ、今の今まで、そんな状況には縁がなかったし、どちらかといえば、そうなることを避けてきたのが憲治の生き方だった。逆に、そんな自分に嫌気が差していたのも、これまた否定できないのである。