憲治が、被害妄想と罪悪感の入り混じる混沌の中に浸ろうかと言う刹那、であった。
 ざあっ。
 彼の背後から稲穂の大海を波打たせ、一陣の旋風(かぜ)が来た。そして「それ」は彼の体を「突き抜ける」。そのイメージに揺り起こされて、彼の体は軽く痙攣した。
 彼の視線は、目に見えない「それ」を追う。しかし見失った。
 いや、見失ったのだろうか?何故なら見失った先に、その少女がいたから。