安心させるために、無理に微笑む「少女」を見つめながら、憲治は自分に言い聞かせるように口走った。
「そうかも知れない、でも、俺自身の心には、まだ聞こえるんだ、『あの子』の声が、俺の罪を責める声が!だから、そう、気がついてたんだ、俺を縛っていたのは、俺が逃げ回っていたのは『千佳子』からだけじゃない、俺が本当に恐れていたのは『あの子を見捨てた』ってことじゃないかって…、だから!」
 「その教室」はすでに目の前だった。憲治はドアの取っ手の窪みに指をかけた。