「あそこが俺の生まれた町、小さいだろ?」





ハンドルをきりながら、工藤は懐かしそうに瞳を細め笑う。




「僕の生まれた土地も同じ様なものだよ。もっとも、山に囲まれた盆地だから、海は無いけれどね」









僕は、田舎が好きだ。





都会は便利だが、ペースについていけない。




見えないものが見える僕にとっては、吹き溜まりでもある。









人混みの中でも、その三分の一は人じゃない。



田舎だからそうでは無いとは必ずしも言い切れないが、少なくとも、出来る事と出来ない事の判別を付けられる余裕はできる。






根がのんびりの僕にとっては、そんな田舎の時間の流れが性に合っているのだろう。









「工藤の家はどの辺?」

「俺の実家は、海のすぐ近くなんだ。網元をしているから」

「網元?」





何だ?






「船の賃貸しみたいなものかな?小さな旅館も経営しているけど」

「へぇ…」






知らなかった。




海沿いの町だとは知っていたが、考えると、あまりそういった話はしていなかった。







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