亜恋と別れたときにはもう、日が沈みかけていた。
春なのに、少し冷たい空気をすって走った。
あんまり遅いから心配しているだろう。
何て言おうか…。

ゆっくりと部屋のドアを開ける。
奥で宏樹と嵐がひそひそと何か、話している。
何やってんだ、アイツラ…?
不審に思って、近づいて聞き耳をたてる。

「…それで?」
「その後、春人が…」
気づいてないし。

「オレが、どうしたんだ?」
2人は振り向くと焦ったようにこっちを見た。
「うわっ!」
「いきなり、しゃべるなよ!」
オレは溜め息をついた。
「何しゃべってたんだよ?」
2人は顔を見合わせた。
「話してやれよ、宏樹」
「りょーかい!」
妙に興奮しながら、宏樹が話し始めた。

「さっき、春人が病院から帰ってこないから、病院まで行ってみたんだ。
 そしたら、なんと!いつもベンチに座ってる子と話してるの見ちゃったんだ!」
見られてたのか…。
全く気づかなかった。
でも、悪いことしてるわけじゃないんだし…。
「なんだ、そんなことか」
「そ、そんなことって!」
今度は慌てだした2人。
「いつの間に知り合ってたんだよ?」
いつもは静かな嵐が今日は感情的だ。
「今日」
「はあっ!?あんなかわいい子を春人にとられるなんて!」
宏樹が騒ぐ。

そんなに怒るなよ…。
ってか、とってないし。
友達になっただけだ。

そう、ただの友達。

今は、まだ。