なんだか熱っぽい気がする。
喉も痛いし、咳も出る。
そんなオレの様子を見て2人はあきれていた。
「雨の中、サッカーするからだよ」
「先生に言っとくから、病院行ってこい!」
嵐から診察券をもらうと病院に向かった。

雨の後だからか、地面がぬかるんでいた。
水溜りにオレの顔がうつる。
水溜りのオレもやっぱり無表情。
「何やってんだろ…」
鼻で笑ってしまった。


医師の先生の診察を受けて薬をもらった。
さっさと帰ろう。
そう思って、病院のドアに向かおうとした時。
「あっ、あの…」
呼び止められて振り向くと、いつも広場のベンチに座っている少女がいた。
「落としましたよ?」
少女が差し出してきたのは、オレの診察券。
「あ、ありがとございます…」
なぜか、使い慣れていない敬語になってしまった。
そんなオレに少女はにっこりと笑った。
その笑顔を見た瞬間。
時間が止まった。
1秒だけ…。

「少し、話しませんか?」

オレはゆっくりと頷いた。
あの感覚は…何だったのだろう?
歯車は確かに回り始めていた。