ああ本当だ

僕の志鶴に近づき過ぎだ

だが、あいつの体型には見覚えがある


「ライバルにもならない」

僕は鼻先で笑った。

「気の小さい俗物ですよ」


志鶴が退屈げな笑みを浮かべて、左手をこれみよがしに振った。

男は慌てて彼女から二歩ほど離れた。


「あれほど大きな金剛石を指に付けさせているのは、このためか」

ちゆ様は感心したように言った。


「羽竜の財力をひけらかすには、ちょうどいい大きさでしょうね。今日ここにいる中で、僕の不興を買う度胸のある奴がいるかどうか……」


「では、今宵はそなたの叔母と名乗る事にしよう。妾は叔母のようなものであろう?」


「ご随意に」

僕はうやうやしく頭を下げた。


「ただ、夜会を楽しむ前に巧の手助けをしてやらねばならぬ」


「巧? 僕の従弟の?」


「あちらの側におるわ」

ちゆ様は手の平をひらひらと振って、向かい側のテラスを指し示した。