豊洲に吹く風

深夜0時。


僕は当然のようにまだ机に向かっていた。



一向に終わらない仕事は次から次へと目の前にやってくる。



振られた仕事に文句ひとつ言わずにこなしているうちに僕はいいように使われるようになっていた。


「お前は根性があるな。」


先輩からそう言われたが、違う。


文句を言う度胸がないだけだ。


だから、僕は今日もひとりひたすら仕事をするしかない。


カチャ

開くはずのないオフィスのドアが開き、驚いて視線を向けると
なんと彼女が入ってきた。


「こんな時間に大変だね。おつかれ。」


そう声をかけたが彼女は小さく頷いた。


ひどく疲れている様子で目は沈んでいるようだった。


「資料を取りに来ただけだから。」


普段の彼女からは想像もできない力のない声に
僕は驚いた。


昼間の彼女は会議でも臆せず発言し、バリバリと仕事をこなす。

入社から1年経とうとしている僕より遥かに仕事が出来る。

相当無理しているんだなとおもたっが。
僕には何もできない。

彼女を助ける余裕はないからだ。

資料を持った彼女が去る。


キイーという音とともにしまったドア。

しばらくドアを見つめていた僕だが・・・。

すぐさま自分の仕事に戻った。