「ほら、川村(かわむら)さんと敏江(としえ)ちゃんも行くよ」

「ちょっと待ってーん!つけま付け直すからぁ!敏江ちゃん、のり持ってない?」

「おにぎりならあるけど」

「米粒で付けろって言うの!?」

「良いから、早く来いって」

本当に……本当に大丈夫なのだろうか……。
選ばれた戦士って、もっとかっこいいものじゃないのか……?
もしかしたら、今日が俺の命日かもしれない。

「緋龍……」

中年に連れられ、教室から出ようとした瞬間、先生が俺を呼んだ。

「何スか?」

「……死ぬなよ」

「先生……」

この人は……今まで嫌な教師としか思っていなかったが、やっぱり根は良い人なのか。
らしくないが、俺は少し感動した。

「はい」

俺は元気にそう返し、教室を後にした。
……でも、よくよく考えれば、さっきの先生の言葉は俺の不安に追い打ちをかけるだけだったのかもしれない。

「やっぱ、アイプチで付けてくれば良かったわー。のりってすぐ取れちゃう」

「お腹空いた」

「お前の学校の制服、可愛いなぁ」

校庭へ行くまで、俺は不安で仕方なかった。
まあ、校庭に出たところで、あの中二イケメンも頼りになるかわからないが。





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