「はい、教科書の三十二頁を開いて下さい」

今日も退屈な授業が始まる。
こんな複雑な計算、将来何の役に立つのだ。
それに……この学校、元は墓地だったらしく、霊の量が半端ない。
今だって、前の席の女子の椅子の下に入り込んでスカートの中を覗いている霊や、隅の方で絵合わせをして遊んでいる戦国時代かどこかの時代の姫みたいな霊がいるし、先生にはよくわからない太った男の霊が憑いているし……。
こんな調子では授業に集中しろというのも無理な話だ。

「こらぁ、緋龍」

「えっ……何スか?」

「何ボーッとしてるんだー。また幽霊でも見えてるのか?」

クラスの皆がドッと笑った。
そんな様子を見て、この教師はニタニタと笑っている。
俺は人をコケにして笑いを取るというスタイルが一番嫌いだ。
くだらない……いかにもクソ教師がやりそうなことだ。
なんと低俗な奴等なのだろう。
笑っている奴も同類だ。
俺はこんなことでは笑わない。

ガラッ

「!?」

コミュニケーション能力のない者にとって、授業中にギャグ要因として弄られることは、途轍もなく苦痛なことなのだ。
そんな状況に耐えていると、突然、教室前方のドアが開いた。

「ちょっと邪魔するぜ」





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