「言わなくていいよ。俺は別に構わない」 そして彼は妖しく笑った。 色っぽい目。 着崩したスーツ。 緩めたネクタイに少し開けたYシャツのボタン。 そこからチラリと見える彼の鎖骨。 今夜の紘哉は全てが妖しく感じられた。 「紘哉くん……何かいつもと雰囲気が違う」 「当たり前。俺も男だ。そこのお嬢さんがけしかけたせいでな」 「……」 紘哉はおもむろにスーツのポケットに手を突っ込んだ。 何か出すのかと思いきや、何も出さなかった。