すると紘哉は足を止めた。
そして口元に皮肉な笑みを浮かべる。

羽兎は背中に嫌なモノを感じた。

「……聞けるものなら聞いてみろよ。
証言者の名前はロックス。
……この家の犬だ」

それだけ言って、紘哉は再びスタスタ歩き出した。

一人取り残された羽兎。
これじゃあ昼間と同じ状況だ。

確かに私が悪いけどさぁ。
でもさ、空腹には勝てないよね。
しかも犬が証言者なんてさぁ――

「このやろーっ!!」

羽兎の本日二度目の悲痛な叫び声が屋敷に響き渡った。