無言のまま数十分の時間が過ぎたとても気まずかった。
こんな事になるなら、やはり一人がよかった。
一人なら先程の青年ともっと話が出来たかも知れないのに…
そんな事を考えていると自然と溜め息がこぼれた。
その瞬間、殺気にもにたとてつもない恐怖を感じた。
一つ席を空けた隣を見ると彼が先刻と変わらない紳士的な笑顔でこちらを見ていた。
私は気が付かないフリをして電波の通じていない、携帯に目を落とした…
それから数分後、目的地が見えて来るというアナウンスが掛かった。
助かったと思った。
それにやっとこの目で本物が見れると言う興奮を抑えられなかった。
「私、ちょっと見てくるよ!」
私が立ち上がってそう言うと、
彼も立ち上がって「一緒に行く」と言って私の前を歩き出した。


