「ごめんなさい。何だかすごい盛り上がっちゃって」
私がそう言うと彼は静かに微笑んだ。
しかし、私は何だか寒気を感じた。
「本当に楽しそうだったね」
彼は微笑みながらそう言って立ち上がって、私に手を伸ばした。
その手はゆっくりと顔に近づいてきた…
私は瞬間的にその手を振り払った。
“パシン”と軽快な音が響いた。
彼は目を丸くしていた。
「あっあの、ごめんなさい!ちょっとびっくりしちゃって!!何というか私あんまり男性に免疫ないからさ!反射的に…」
私がわたわたとそう言っていると彼はボーと自分の手を見つめていた。
「岬ヶ丘くん?」
私がそう彼の名前を呼ぶと彼はハッとしていつもの顔に戻った。
「そう言えば、覚えてる?小学校の時に兎に咬まれて怪我をしていた俺に手当てしてくれたの」
私は少し考えたが思い出せず首を横に振った。
彼はそれをみると
「そう、」
と言って海の方を見た。


