その瞬間、私は彼の小学校の時のあだ名を思い出した。
それは確か“能面”。
理由はどんな時も表情が変わらなかったから。
飼育小屋の兎が死んでいた時、
みんなが泣いていたなか彼だけはいつもと変わらない顔をしていた…
むしろ微笑んでいた。
「先橋さん、どうしたの?船、出ちゃうよ」
私は彼にそう言われてハッと意識を戻した。
「ごめん。何だか岬ヶ丘くんが凄い紳士的だったから驚いちゃって。私の周りってそう言う人が居ないんだよ」
私は笑いながら、彼にそう言った。
彼は変わらない紳士的な笑顔で「ふ~ん」と言った。


