……そうよね、出会い方からしてさもイザコザがありそうなこんな小娘に、誰がここまで優しくするだろう。


こんな赤ちゃんができたという、何の役にも立たないあたしを必要とするはずがない。


結局、あたしはこの赤ちゃんと同じように誰にも必要とはされていないんだ。


自分のお腹をそっと撫(ナ)でれば、目頭が熱くなる。


……胸が苦しい。


だけどここで泣くわけにはいかない。

泣いたら最後、あたしが負けだと肯定することになる。


せめて、誰もいない場所で泣かなきゃ。

涙が流れるのを抗(アラガ)うため、あたしは一度そっと目を閉じる。

そしてふたたび目を開けると、折りたたまれている服を手にした。



……ええ、ええ。

言われなくても出て行くわ、今すぐに!!


あたしは勢いよく立ち上がり、木目調の扉へ――つまりは腕を組んで突っ立っている潤さんの方へと歩いた。

すれ違いざま彼をひと睨(ニラ)みする。

そうして潤さんを追い越した直後だった。


「あ、あの、どこへ……」

しどろもどろな言葉が後ろから聞こえた。


――は?

この人は何をわけがわからないことを言っているんだろうか。

彼はさっき、あたしに『さっさと出て行け』とそう言った。

だから洗面所に行って着替えようと思った。

すぐに出ていけるように。


それなのに、彼は『どこへ行くのか』と尋ねてくる。



わけわかんない!!