それはまるで、あたしのことを汚いものでも見るような目つきだった。

どうして潤さんはあたしをそんな目で見るのだろう。

彼はなぜ無言なのだろうか。


昨日は熱があったあたしを看病までしてくれた。

しかも痴漢呼ばわりして叩いたのに、怒るどころか笑い、許してさえもくれた。

それなのに、射抜くような視線を寄越(ヨコ)してくるなんて……。



今さら昨日のことが腹立たしく思えてきたのだろうか。


でも眠る前さえもあたしを心配してくれていたのに……?


気がつけば、あたしの口の中は彼がかもしだす緊張感でカラカラになっていた。


「朝食が終わったら出て行ってくれ」

そして、長い沈黙を破った彼は冷ややかに、そう告げた。

あたしは何も言えないまま、ただ固まっていると、あたしの心情なんておかまいなしに彼は話しを続ける。


「着替えはそこにある。それで問題はないだろう」

彼が顎(アゴ)と目線で示した先は祈ちゃんが眠っている奥の方だ。

押入れの前に無造作に置かれているデニムとブルーのパーカー。


潤さんがあたしを見る冷ややかな眼差しと仕草は、昨日、慶介に言われた『中絶してくれ』という言葉と似ていた。




――家に戻るための服があれば問題なく帰れるだろう。

――お金さえあれば簡単に中絶できるだろう。


そう言う彼らは要するにあたしが邪魔なんだ。


朝食を食べたら出て行ってくれですって?

早く出て行ってほしいくせによくもそこまでヌケヌケと言ってくれるわ。