だが、どうしても彼女が何者なのかを知りたい。



――いや、ぼくは別に彼女が何者であろうとなかろうと関わることに躊躇(タメラ)いはない。

ぼくは大人だし、なんとか対処できる自信もある。

だが、ぼくには祈がいる。


もし、彼女が世間に後ろめたい何かをしているとして、それをぼくが気づかずにいれば、傷つくのは祈だ。


なんたって、祈は彼女に懐いている。

きっとこれからも交流を持ちたがるはずだ。


そこでふと頭の中に過ぎったのは、果たして彼女がそんな後ろめたい何かをする人物だろうかということだ。


ぼくが失敗したスパゲッティーを食べるよう祈に説得し、対等に話し、笑いあった彼女が……?

それに、純粋な子供が果たして後ろめたい何かをしている人物に懐くものだろうか。



――わからない。



そうだ。わからないから、たしかめるんじゃないか!


疑問を抱く自分に正当な理由を作り、そうしてぼくは彼女のカバンのチャックを開けた。


そこですぐに見つけたのは、真っ白い取っ手がついた可愛らしい小さなカバンとは不釣り合いな、何の飾り気もないコンビニやらで売っているような至ってふつうの茶封筒だ。

その封筒はまるで今、急いで用意しましたと言わんばかりのものだった。

それにもかかわらず、封筒はとても分厚い。



…………ごめんね、美樹ちゃん。


後ろめたい気持ちを少しでも軽くしようと、この場に居ない彼女に向かって小さな声でぼそりと謝罪を入れる。



分厚い封筒を開けた。