それを見た彼女は大きな目を細め、口元には笑みを浮かべている。

――そう、それこそがぼくが見たかった笑顔だ。



「…………」


祈は彼女から視線をそらし、何かを考えているようだ。伸びきったパスタを一心に見つめている。

いつまでも食べる姿を見られては居心地が悪い。


祈の心情を察したぼくは食器を片付けようとフローリングから腰を上げた。


すると突然、ぼくのシャツが後ろに引かれた。

何事かと思い、振り返れば、小さな手がシャツの裾を掴んでいた。



「パパ……ごめんなさい。ごはん、つくってくれて……ありがと……」


そう言った祈の視線はやはりぼくではなくスパゲッティーにある。

一度は否定してしまったんだ。なかなか面と向かって素直に謝ることができないんだろう。



それでも謝ったのは、心から悪かったと思っているのだと、そう思った。


ぼくはそんな祈を誇らしく思った。



「いいんだ、パパこそごめんな」

ぼくが謝ると、祈はフルフルと頭を振り、大きな目に涙を浮かべてポロポロと大粒の涙を流しはじめた。


「ごめっ、なさい。『いらない』っていって、ごめんなさいっ!!」

祈はそう言って短い両手を伸ばしてくる。


その祈がとてもいじらしくて可愛くて……だからポンポンと頭を撫(ナ)でてやりながら、ぼくは大粒の涙を流す小さな体を抱きしめた。


そのぼくの隣では、彼女が微笑んでいる。