「パパ、だいじょうぶ? たいへんっ! おてて、あかい!!」

ぼくの右手を見た祈は大きな声を上げた。



「大変!! あの、救急箱ってありますか?」

気がつけば、茹で加減を失敗し、がっくりと肩を下ろすそんなぼくの両隣にふたりの天使が寄り添っていた。


「もう、パパ!! ふちゅういすぎ!!」


「……面目ない」

……お叱(シカ)りもごもっともです。

祈の正論には返す言葉もない。


――そうして祈に責められ、思わぬ自身の不注意で手の甲を火傷してしまったぼくは寝室に移動し、熱を出していた彼女に手当をしてもらっていた。

ふたつの敷布団が連なったその真ん中には真四角の白い救急箱が置いている。


ぼくの右手はまだ炊事をするということで、軟膏を塗った後、ガーゼの上から彼女の機転で防水フイルムが貼られている。

そんなにひどい火傷ではないと思うのに、それでも彼女は悪化してからでは遅いとそう言い放ち、こうしてぼくの右手は厳重に介抱されていた。


「よし、これでいいですよ」

彼女の柔らかな手が離れる。

ぼくの右手に触れていた彼女の手が離れれば、ひんやりとした空気に包まれた。


それが少し、寂しいと思う自分がいた。


人肌が恋しいなんていったいどこの子供だよ。


自分の考えに苦笑してしまう。


「ありがとう」


「いいえ、どういたしまして」

お礼を言ったぼくの目の前には罪悪感に満ちた表情はなく、はにかんだ笑みがあった。

だからぼくは、これ幸いにと口をひらく。