だから早く内容を言わなくちゃいけない。
だけど……だけどね。
ああ、めちゃくちゃ緊張する。
これから言わなければいけない言葉を頭の中で必死に組み替える。
膝の上に置いている手には力が入り、指が関節とは逆方向目指して反り上がっている。
慶介と会ったことで火照った体は赤みを帯びていたはずなのに、今は余分な力が入ったおかげで指の部分だけ黄色がかっている。
「美樹!」
「……っつ!!」
突然堰(セキ)を切ったように冷たい声が頭上から降ってきた。
しまったとそう思ってももう遅い。
あたしは俯(ウツム)けていた顔をゆっくり上げた。
恐る恐る慶介の顔を覗きこめば……。
彼はやっぱり不機嫌だった。
つり上がった眉間には立派な深い皺ができている。
どうやらしばしの沈黙が長すぎたようだ。
――慶介はいつもそう。
彼は待たされるのが大がつくほど嫌いなんだ。
ウジウジした人は好きではないみたい。
ううん、好きじゃないっていうのはとても遠まわしな言い方ね。
彼はウジウジしたナメクジ女が大嫌いなのだ。
白か黒、はっきり物を言わない人間は好まない。
「美樹、俺は君とは違って忙しいんだ。さっさと用件を言ってくれ」
畳み掛けるようにそう言う慶介は人差し指でテーブルを叩いている。
あたしは時折見せるそんな慶介が苦手だった。