おかげで会社に勤めている女子からはとっても人気がある。

でも彼がモテるのは、仕事ができるからとかカッコいいからとかいう理由だけじゃない。


彼はとても親切なの。

大学入学のために両親に反対されて半ば無理やり何もない田舎から東京にやって来た土地勘のないあたしに優しい声をかけてくれて、それは親切に仕事の内容を教えてくれた。


――それからだ。

少しずつ互いの距離が近づいて、慶介はあたしの彼氏になったんだ。

その慶介と、今日で何回目のデートになるだろう。

今まで行ったデート先は豪華客船だとか、綺麗なシャンデリアがあるホテルで高級ディナーだとか、そういったとても華やかなところばかりだった。


山と川しかない田舎育ちのあたしの頭では、そんなデートがあるなんて知りもしなかった。


いつもは彼がセッティングしてくれるんだけど、今日は違う。

今日のデートはね、あたしから誘ったの。



実はあたし。

慶介をデートに誘うのは初めてで、とても恥ずかしくてドキドキしたけれど、どうしても話したいことがあったから日曜日はどうかと切り出したのは、先週の月曜日。

それでも、うなずいてくれるなんて思いもしなかった。


だって彼は次期社長と社内のみんなにもてはやされているその人だ。

とても忙しい身の上なんだもん。

それでもあたしを優先してくれる彼がとても好き。


仕事よりもあたしのことを考えてくれてるんだって、ついつい自惚(ウヌボ)れてしまう。