そう思ったのは、こんな大粒の雨で――しかも風も強い中でうずくまっている心情はそういうことしか思い当たらなかったからだ。

しゃがみこんで彼女を見つめるけれど、顔は俯(ウツム)いているから表情を確かめられるはずもない。


その時だ。

ぼくの心臓がトクンと大きく鼓動した。


彼女に近づき、様子をうかがうぼくの感情が変化したのを自分でも感じ取った。



この感覚はいったいなんなんだろう――……。


戸惑う自分がいるのに、手は勝手に動き、彼女の小さな肩に触れた。



すると、どうしたことだろう。

彼女に触れた指先から静電気のようなピリリとした何かがぼくの体中を駆け巡るのを感じた。


そして、次に彼女を見た時――強い感情がぼくの中で生まれたんだ。

それは保護意識。


ぼくはほんの一瞬で、あろうことか彼女を守りたいという感情を抱いたんだ――。


これには驚いた。

だってぼくと彼女は今日、今ここで初めて出会ったんだ。


当然、彼女のことは何も知らないし、話したこともないから彼女の声がどんな声色をしているのかもわからない。


それなのに、守りたいなどと、なぜそう思えるのだろうか。

しかも、『守る』というのもおかしな表現だ。

彼女はひょっとすると守られるほど弱い人間ではないかもしれないのに……。


それに不思議だ。

彼女のことをずっと昔から知っていた気がする。


今日、ここで初めて会った気がしないのはなぜだ?



ぼくが戸惑っている間にも、雨は容赦(ヨウシャ)なくぼくたち目がけて降ってくる。