「えっ? あの、えっ!?」
あたしの頭の中はパニック状態だ。
だって、まさかこの場に端月さんまでいるとは思わなかったんだもん。
そして、次に現れた新たな人物があたしの頭の中をさらにパニックへと追い込む。
新たな人物っていうのは……。
「潤、お前もまだまだだな」
潤さんよりも少しだけ背が低いその人は突然潤さんの背後から忍び寄り、ぽんっと肩を叩いた。
潤さんが驚いて振り向く。
「えっ? 父さん!?」
潤さんのお父さん?
潤さんの言葉であたしも驚いた。
「コレ、うちの父さん」
彼はそう言うと、後ろに立っている中年の男性を指さした。
とても肩幅が広くて、髪はところどころ黒が残っているものの、白髪だ。
ベース顔とわし鼻は力強く、とても貫禄(カンロク)がある。
だけど怖いとは思わない。
それはきっと、潤さんと同じ弧を描く唇があるからだ。
「えっ!? あっ、こ、こんばんはっ!! はじめまして、あの、あたしっ」
突然の出来事にびっくりして声が裏返りながらもお辞儀をして挨拶をする。
体に青色のエプロンを巻きつけて涙の跡がくっきりのこっているあたしの今の顔はとても間抜けだろう。
初めての対面がこんな姿だなんて最悪だ。
どうしようかとしどろもどろになっていると、張りがある声が話しかけてくれる。
「妻の端月から君のことは聞いているよ。何か困ったことがあればいつでも言ってくれてかまわないからね」
そう言って、にっこり笑う目尻には細かい皺が刻まれた。