気持ちに少しだけ余裕がでてきたあたしは背中になにか柔らかいものが当たっているのに気がついた。
時々、ガサっていうビニールのような音が聞こえてくる。
ガサって、なに?
潤さんを見上げると……。
困った顔をしてあたしの背中を包んだ手を離した。
そうかと思ったら、潤さんは突然膝立ちをする。
そんなあたしの目の前には、白い花びらをまとった無数のバラがあった。
「えっ? えっ?」
これはいったい何だろうか……。
口をパクパク開閉させていると、潤さんがあたしを射抜くように見つめてきた。
そして、彼はゆっくり口をひらく……。
「ぼくの年収は900万で、そこそこ収入はある方だと思っている。
性格は、君が知っているとおりカメラしか能がないあまり褒められた奴じゃないけれど、君やこれから生まれてくる君の子供、祈をきっと幸せにする自信はある」
そこまで言うと、彼は一度口を閉ざした。
そして、大きく息を吸い……。
「森本 美樹さん、愛してます。ぼくと結婚してください」
ちょっぴり大きな声でそう言った。
――えっ!?
なに?
なになになになになに!?
あたしは今、彼に何て言われたの?
結婚?
……ううん、違う。
あたしにとってそんな都合のいいことは言われてないと思う。
じゃあ、彼は何と言ったの?
どうして白いバラの花束をあたしに向けているの?



