「ごめっ、ごめんなさい。きらわないで……きらわないで……」


泣き止もうと思うのに、その感情とは裏腹にあたしの目からはボタボタと涙が流れてしまう。


「えっ？　ちょっと待って、どうしてそんなことくらいで嫌うの？」


「泣き虫でウジウジしてる役立たずなあたしなんて嫌いだって、そう言った」

「えっ？　ぼくがそんなこと言ったの？　そんな覚えはないんだけど……」

「っひっく、いっ、言ったもん。あたしと別れようって、けいすけがっ！！」

「え？　慶介さんはぼくじゃないでしょう？」

「ちがわないっ、違わないもんっ、みんな、みんなそうおもってるっ！！」

泣きながら首を振るあたしの体が急に引っ張られた。


――な……に？

どうしてあたしは潤さんの腕の中にいるんだろう。

それはあまりにもびっくりしてしまって、目から流れる涙が止まった。


「美樹ちゃん、ぼくはそんなこと思ってないよ。どうしよう、なんて言ったら君は泣き止むかな」

優しい潤さん。

そうやって駄々をこねる子供みたいなあたしを優しく包んでくれる。

一度はびっくりして引っ込んだ涙が、おかげでまた目からこぼれ落ちてしまう。


「じゅんさん……潤さん、潤さん。うぇええっ」

往生際(ｵｳｼﾞｮｳｷﾞﾜ)が悪いあたしは手を伸ばし、離さないでと彼の広い背中にしがみつき、たくさん泣いた。


「……っふ、ふぇっ……」

大泣きするのも少しずつ治まってきた頃……。