あたしはじゅぶん、身のほどはわきまえているつもり。

潤さんが本当に想っているのは野暮ったい田舎娘のあたしじゃなくて、沙良さんただひとりだけだ……。


それを思い知らされると悲しくなる。

さっきまでの熱は消え、冷えてくる。


それに目頭は熱くなって、涙で視界が滲(ニジ)む。



「っふ……っ」

胸の中が苦しい気持ちでいっぱいになったあたしは、沙良さんのお仏壇がある祈ちゃんの部屋まで走り、うずくまって涙を流した。



……いったいいつからこんなに欲張りになってしまったんだろう。

潤さんの傍にいるだけで幸せだと思ったのに、その次は両想いになりたいとか……。


その次の次は彼の奥さんになりたいだなんて身のほど知らずもいいところだ。


こんな感情、とても馬鹿(バカ)げてる。

そう思うのに、欲張りなあたしはもっと、もっとと潤さんを欲しがってしまう。


こんな浅ましい奴なんか、きっと潤さんも嫌いになるだろう。

慶介の時みたいに、『別れよう』ってそう言われるんだ――……。


嫌われた時のそのことを考えるとますます心が折れてしまう。


「っ、じゅんさん……」


あまりの悲しみで覆われたあたしの胸がぎゅううって締めつけられる。

……あたしは駄々をこねる幼子のように沙良さんの仏壇の前でうずくまり、唇を噛みしめて泣いた。