壁にかかっている時計を見ると、時間は夜7時を回っている。

たしかに、そう言われればお腹が空いた気がする……。


かといって、さすがに今から夕食を作る気力はぼくにも美樹ちゃんにもなかった。



「パパ、イノピザがいい! ピザたべたい!!」

いったいどうしようかと考えていると、祈が両手を耳の横に上げて進言する。


……しょうがない。

なんたって今日は祈が大活躍したんだ。

ご褒美をあげてもいいだろう。


「よしきた!!」

ぼくは廊下にある電話ボックスからピザの注文表を取り出すと、大人しく椅子に座っている祈に見せた。



「やった!! イノね、イノね、ポテト!!」

言うなり、祈はポテトを指さした。


……いやいや祈さん、それはサイドメニューでピザじゃないですよ。

などと突っ込みながら、いったい何度目になるだろう祈の即行曲を、その日、美樹ちゃんと共に心弾んだ気持ちで聞いていた。