だけど、ぼくはこれに屈してはいけない。
今、必要な言葉を口にしなければ、美樹ちゃんは永遠にぼくから離れ、去っていくだろう。
ぼくにとって彼女がどれほど必要かを思い知らされたあとだ。
――そんなことは耐えられない。
「それは、ぼくの感情が理解できなかったからだ。
恥ずかしい話、君と一緒にいるとぼくの感情がとても乱れるんだ。
それはけっして悪い意味じゃなくてね、君の一挙一動に惑わされるぼくがいて、お腹の中に子供がいることをどうして言ってくれなかったんだって……こんなに近くにいるのに、相談してくれなかったのかって思った。
そんなにぼくは頼りない存在なのかと自分の不甲斐(フガイ)なさに呆れていただけなんだ」
どうかぼくの気持ちを理解してほしい。
そう願い、ひと息に真実を告げる。
「だって、それは、いつか潤さんや祈ちゃんと離れなきゃいけないから……言わないほうがいいと思ったんです」
ぼそりとそう言った美樹ちゃんの声は、触れれば壊れてしまうんじゃないかというくらいとても細かった。
ひとりで抱え込むということがどれだけ不安で、どれだけ辛いものだろう。
それを思うと胸が苦しくなる。
「……うん、そうだね。だけどぼくは、それがとても苦しかった。その感情って、つまりそういうことでしょう?」
ぼくは美樹ちゃんの肩に乗せていた片手を動かし、涙で濡れた頬へと伸ばす。



