「あたしがどれだけ……」
「美樹ちゃん?」
ぽつりとつぶやく彼女の声は、はじめぼくの耳に届かなかった。
何を言ったのかと尋ねる。
「あたしがどれだけ貴方を想っているか、貴方は知らないでしょう!?」
「えっ?」
だけど、彼女の言葉はまたもや耳から耳へ通り抜けてしまう。
この場の空気に似合わない、とても間抜けな声を出してしまった。
「好きなの……。優しくされたらされるだけ、大きくなっていくこの気持ちを、貴方は知らないっ!!」
……なに?
彼女は今、なんと言ったんだ?
ひと息にそう言った彼女が話す内容はあまりにも唐突で、理解するのが遅れてしまった。
だって彼女は、ぼくのことを好きだとそう言ってくれたんだ。
思いもしない言葉に意表を突かれ、返事ができなくなる。
だけどもしかすると、彼女の『好き』はぼくが思っているものではないかもしれない。
勘違いして舞い上がった後、突き落とされてはたまらない。
いったい美樹ちゃんはどういう感情をぼくに対して持っているのだろう。
それを尋ねるため、口を開く。
「美樹ちゃん?」
「っ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
すると美樹ちゃんはぼくの声に我に返ったのか、細い肩を震わせたあと、すぐに口元を押さえた。
――かと思えば、それは言ってはいけない禁じられた言葉だというように何度も謝ってくる。



