背中に回された手があたしを強く包んでくれたんだ。
優しさにあふれた彼に包まれているあたしはただ涙を流し、すがる。
「彼女のことは子供も含め、ぼくがすべて面倒を見る。
君からは一切援助金を受け取らないし、君が会社の社長になろうがなるまいがぼくらには関係ない。
――ただ、これ以上彼女に関わるようなら裁判にでも持ち込む。
君がそれを望むなら……」
潤さんの胸に顔をうずめていると、潤さんのそこから振動が伝わってきた。
同時に彼の凛とした声が静まり返っている倉庫中に響き渡る。
「潤さん……潤さん……」
あたしはひとつ覚えの子供のように彼の名を呼び、ただひたすらしがみつく。
ふたたびシンと静まり返ったその場所では、あたしのしゃくりだけが響くだけだった……。
沈黙という名の静寂が周囲を包む中――。
何も言わなくなった慶介が気になり、横目で彼を捉える。
彼はそれ以上何も口にすることはなく、ただ悔しそうに唇を噛みしめていた。
これ以上、冷たい慶介を見たくない。
あたしはふたたび慶介から視線を逸(ソ)らすとあたたかな胸に顔をうずめた。
……そうして優しく包んでくれる力強い腕に導かれ、あたしはその場を後にした。