side:Miki Morimoto



――ここは春日公園から車で走らせること1時間と20分のところにある、映画でも使われたりするようなとても大きい建物で、重要人物を招いたりだとかがざらにある豪華な50階建ての東洋風ホテル。

あたしは彼、麻生 慶介(アソウ ケイスケ)と共に、そのホテルの一室にいた。


目の前には大きな等身大の窓が広がり、とても綺麗なルビー色に染まった赤焼けの空を映している。

その窓の両サイドにはベージュ色のカーテンが流れるように配置され、白をベースにした部屋はとても広くて清潔感がある。

あたしが座っているソファーだってとても座り心地がいい。


ここは恋人と過ごすにはとても素敵な場所だ。

だけど、あたしはここにいても嬉しくはないし、少しもロマンティックな気分にもなれない。



だって、あたしの目の前にあるガラスのテーブルを挟んで椅子に座っているのはあたしと赤ちゃんを捨てた慶介だ。

「これ、返します」

あたしはまるで無機質な機械のアナウンサーのようにそう言うと、カバンの中から茶封筒を取り出し、ガラスのテーブルに置いた。

その茶封筒は言うまでもなく、彼――麻生 慶介が最初に手渡してきたもので、中にはお札が入っている。

中に入っている金額はあまりにも恐ろしく思えて数えるどころか茶封筒からも出していない。