「行ってきなさい。私が留守番をしているわ。もしかしたら入れ違いになって美樹ちゃんが戻ってくるかもしれないもの。その時は連絡するわ」


――ああ、そうだった。

母さんはいつだって祈の味方だったんだ。

そして最近では美樹ちゃんの味方にもなりつつある。

やれやれと頭を振るぼくだが、こうしている間にも美樹ちゃんの身が心配だ。

なにせ、彼女には赤ん坊が宿っているんだ。


何かあってからでは遅い。

早く探しに行かなければ!!


「母さんありがとう。留守をお願い。祈、行くぞ!!」

「うんっ!!」

エレベーターの待ち時間もじれったく思えたぼくは、小さな体を抱え上げると一気に階段を駆け下りた。

ついさっきまで乗っていたガレージにある車の助手席に祈を乗せ、ぼくは運転席にふたたび乗り込みシートベルトを差す。




「いない、いないよ、おねいちゃん!!」

今日はいつもよりずっと気温が高い気がする。


今度こそ冷房を入れたぼくは祈を乗せて車を走らせること15分。

以前、美樹ちゃんが住んでいた社宅がある場所よりももう少し手前にある春日公園までやって来た。

ぼくらは車の窓から顔を出し、車道から公園の中にそれらしい姿がないかと美樹ちゃんを探す。


しかし、やはり時間が経ちすぎているのか、見えるのは子供たちが数人砂場の上でトンネルをつくっている姿だけで、スーツ姿の女性は一向に見えない。