あたしはこんな生活を望んでいたわけじゃない。
こんな日常を求めていたんじゃない。
今の生活が苦しくて、涙がポロリとこぼれた。
寝ている祈ちゃんから顔を背け、背中を向けて縮こまる。
声に出さないよう、必死に我慢をするのに、それでも涙があふれてきた。
誰しもがあたしを嫌っているんだとそう思うと、余計に涙が流れてくる。
「……っく、っひ……」
唇を引き結び、声が漏れないよう泣いていると……。
「なかないで、ママ……」
「……っつ!!」
ふいにあたしの背中にあたたかい体温を感じ、息を止めた。
このあたたかい体温は祈ちゃんのものだ。
彼女の言葉はまるで、自分のお腹に宿っている子供の代わりに言ってくれているみたいに感じる。
今は祈ちゃんが寄り添ってくれている。
あたしはひとりじゃない。
実感すると、また涙がポロリと流れた。
……どれくらいそうしていただろう。
どうやらあたしは泣き疲れて眠っていたみたいだ。
眠る前には強かったカーテンの隙間から入ってくる日差しは少しだけれど弱くなっていた。
そんなあたしの後ろでは規則正しい寝息が聞こえている。
子供独特の高い体温のおかげで、あたしの背中はとてもあたたかい。
視線を下へとずらせば、細い腕が見えた。
これは無意識なんだと思う。
あたしのお腹部分には彼女の小さな腕が巻きついていた。



