なおかつ、何があってもいつでも駆け込めるように産婦人科に近いところっていう無茶苦茶な物件を探しているんだもん。


難しいとは思うけれど、それでもこれだけは妥協できない。

強いてはすべて、あたしとこれから生まれてくる赤ちゃんのためなんだ。


はじめ、やっぱり実家に帰ろうかとも思った。

物件を探す手間もなくなるし、早くに出ることができるから……。


でも、でもね。

往生際(オウジョウギワ)が悪いあたしは好きな人の近くにいたいって思ってしまう。

それに、実家に戻って赤ちゃんを産んだとしても、きっと誰からも祝福されることはないだろう。

遊ばれた上に捨てられたと、後ろ指をさされて生きていくなんてそんなのイヤだ。


だから、あたしのことをあまり知らない土地でゆっくりした気持ちのまま赤ちゃんを育てていきたいって思ったんだ。

たとえ嘘であっても、生まれてくる赤ちゃんには『あなたは祝福されて生まれてきたのよ』って言ってあげたいから――。



そして今日は、あたしのお腹に赤ちゃんがいることを潤さんに知られてから5日目が過ぎた土曜日。

相変わらずあたしと潤さんはギクシャクしたまま過ごしていた。


今日は土曜日だから、やっぱり祈ちゃんの幼稚園はお休みで、あたしは彼女のお昼寝に付き添っていた。

子守唄を歌いながら、幼い寝顔を覗き込み、ふぅっと息を吐く。


……正直、ギスギスしたこの環境には息が詰まる。