だけど声を上げて笑うあたしは当然、彼が何を言ったのかわからなくて、こみ上げてくる笑いを止めて潤さんの顔を見つめると、彼はあたしから視線を外し、後ろを向いた。


そんな潤さんの姿がなぜか照れているみたいに見えたのはきっと気のせい。

そう思うのに、また胸が高鳴りはじめてしまう。


「……っつ、行ってきます!」


玄関のドアを開けた彼の耳が赤く見えたのは、あたしの心臓があまりにもドクドクと鳴っていたから見間違いをしただけだ。


あたしは彼が自分に好意を抱いてくれているかもしれないと自惚(ウヌボ)れてしまわないよう、自分にそう言い聞かせ続けた。




「おねいちゃんは、ここでねるんだよ?」

お仕事に行く潤さんのお見送りをしたすぐ後、祈ちゃんはあたしの背中を押して、チョコレート色をしたカーテンがある6畳の部屋まで誘導してくれた。

ここは祈ちゃんと潤さん。そしてあたしの寝床になっている部屋だ。

夜はこうして敷布団がふたつしかないからと、祈ちゃんを挟み、川の字になって寝ている。


その敷布団を、祈ちゃんは体全体を使って布団を綺麗に整えてくれた。

あたしの腕を引っ張って整えた布団で寝るよう、勧めてくる。

……仕方ない。

こうなったら少し横になってから元気になったとそう言おう。


「ありがとう」

あたしは祈ちゃんにお礼を言うと布団の中にもぐり込んだ。

あたたかな布団の中はとても気持ちがいい。

おかげで知らない間にうとうととしてしまっていたらしい。