チャーハンに入っているウィンナーはもちろん、タコさん型に切ったものだ。


「祈ちゃんはお姉ちゃんが好き?」

そうしてあたしたちは台所にあるテーブルを挟んで向かい合い、座る中、端月さんは目の前に座っている祈ちゃんに尋ねた。


「うん! おねいちゃんは、イノのママになるんだよ?」

祈ちゃんは手にしているフォークでチャーハンの中からタコさんウィンナーを器用に選び出し、小さな口に入れながらそう言った。



えっ!?

いつからそうなったの!?


「まあまあ、そうなの?」

端月さんは大きな目をより大きく輝かせ、身を乗り出して祈ちゃんに尋ねている。


「いえ、違います!」

端月さんはやっぱり潤さんのお母さんだ。

彼女もけっして子供をないがしろにしない。

それどころか、対等に子供と話しをしている。

……のはいいことだと思うんだけどね。

でも、今に限っては鵜呑(ウノミ)みにしないでほしいな。


……だって……。



だってあたしは近いうち、この家から出なければいけない。

あたしのお腹には赤ちゃんがいる。

これ以上、彼らに迷惑をかけることはできない。


「ええっ!? でも、イノがねてるとき、『しゃしん』の中にいるママがそういってたもん!」

祈ちゃんは小さな口を尖(トガ)らせ抗議してくる。

あたしはそんなふたりに挟まれ、なぜか叱られた小学生の気分だ。

でも祈ちゃんのそれは夢だし、現実じゃない。